【国会レポート】高齢化する日本を救うシステムと技術【2017年4号】

国が責任を持って最後まで看取る時代になった

私の地元のJR高崎線の駅では朝の通勤時間帯には7分間隔で列車が止まります。7~8年前まではどの駅でもホームに来る通勤客の流れが途切れるようなことはありませんでした。しかし今は上尾駅を除く駅では通勤客の流れが断続的になっており、午前8時を過ぎるとホームも閑散となってしまいます。逆に言うと、それだけ地元で1日を過ごす退職者が増えるということです。

しかも数年前に私が調べたところ、ここ埼玉6区は全国289小選挙区のうち最速で高齢化していくことがわかりました。その意味で日本の課題を象徴的に抱える地域に私たちは暮らしています。言い換えれば、その解決策は高齢化する日本社会の課題を解決するモデルともなるのです。

地域の高齢者の医療・介護を誰が担うか

高度成長期を支えた方々はすでに定年を迎えています。一方、その子供たちはすでに独立して都心部で働いているため、地元の戸建てや団地では老夫婦だけが残って暮らしているのです。

子供が同居していないのですから、高齢者の親の医療・介護を誰が担うかは大きな問題となります。解決策の一つに挙げられるのが、訪問診療、訪問看護、訪問介護をチームで行える仕組みの構築です。

政府も、今後10年間をメドに地域包括ケアシステムを構築するという方針を掲げています。この地域包括ケアシステムとは、重度の要介護状態となっても自分らしい暮らしを住み慣れた地域で人生の最後まで続けることができるように、住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供するというものです。

私は、このシステムの理想は終末期の方が多くの人々に囲まれて「いい人生だった」と思えるような状況を、地域社会が一体となってつくることだと考えています。

この地域包括ケアシステムを現実面でしっかりと機能させるには、地域に住んでいる皆さまと医師、歯科医師、薬剤師、介護事業者との連携も含めていくつか問題も横たわっています。なかでも、地域を支える医師の確保は急務です。

地域包括ケアシステムにはまず医師の確保

今、地元では、何人かの比較的若い医師たちがチームを組んで24時間365日対応の訪問診療に取り組んでいます。今後、訪問診療の需要は爆発的に増えることが想定されるため、訪問医療に携わる医師を私たちの地域に招く準備しなければと考えているのですが、若い医師には都市部での開業を望んでいる人が多いそうです。とすると多くの医師を地元に呼び込むための制度面での施策が必要になってきます。

まずその前提として、訪問診療での医師の負担を減らすなど、24時間365日対応の訪問診療を無理なく行えるようにする工夫が必要です。

例えば、まず看護師が在宅医療や在宅介護を受けている方のところに伺い、必要と判断した際には医者に往診をお願いする、つまり看護師にゲートキーパーの役割を担ってもらうことで医師の負担が軽減できるはずです。

現在、ゲートキーパーの役割を引き受けているのが訪問看護ステーションですから、その充実を図るとともに地域で生活している看護師の方にもチームを組んでもらい、24時間の体制を組むことが望まれます。地域のナースコールの役割を担うことになるのです。

介護状態の方や患者への24時間365日対応については複数の医師がチームで行いますので、チームで連携するためにはカルテのオンライン共有も必要です。

診療報酬・介護報酬が改定される来年度は、訪問診療、訪問介護への政策誘導も検討課題となります。

介護の負担を大きく軽減する日本のロボット技術

さらに、私が高齢化する日本社会のカギを握っていると考えているのが、世界をリードする日本のロボット技術です。

例えば、介護の負担を大きく軽減する技術にロボットスーツがあります。私は、この分野で最先端を走っているつくば市のサイバーダイン株式会社のCEO(社長)である山海筑波大学教授と意見交換したことがあります。実用化したHALという名称のロボットスーツは今、介護のリハビリ用に数百台がレンタルで貸し出されています。レンタル方式なのは、常に最新版を使ってもらうためです。

脳梗塞や脳出血による障害が残った際には、その患者はリハビリを行わなければなりません。しかし、そのリハビリには強い意志が必要で、挫折してしまう人も少なくありません。そのときに力を発揮するのが、ロボットスーツなのです。つまり、要介護者がHALを装着すると両足が楽に動かせるので、強い意志がなくてもリハビリを続けることができるのです。

リハビリを続けていれば、そのうちHALを装着しなくても足が動かせるようになります。それにより寝たきりでなくなれば、家族の介護作業の負担ばかりか、介護保険への国の財政負担も軽減されていきます。

ドイツの公的保険機関では、HALを医療保険の対象にしているのですが、これもHALによって寝たきりを解消するとともに、介護士の付き添い費用なども減らせるため、財政負担が軽くなるという判断からです。

地元が日本の課題解決の中心地となる

このロボット産業は、私の地元にも大きな関係があります。圏央道と上尾道路の開通によって、サイバーダイン社のあるつくば市にも容易に行けるだけでなく、成田空港とつながれば海外に行くのも楽になります。

私が副大臣の時、黒岩祐治神奈川県知事からの要望に応えて神奈川県のロボット特区の指定を取り付けました。それにより神奈川県は生活支援ロボットの実用化や普及を促進する取り組みを行えるようになりました。こうした動きと連動することによって、地元の圏央道沿線にもロボット関連企業の集積を進めることができます。

私たちの地元を日本の高齢化に伴う課題を解決する中心地とするため、こうした企業の誘致にも積極的に取り組んでいます。