【国会レポート】与党としての最大の責務は法律を成立させることだ【2011年11号】

2011年は3月11日に起こった東日本大震災直後の対応、その後の被災のフォローアップへの与野党各党の取り組みなど政治の見識が試された年だったと思います。その間、私も通常国会と臨時国会で衆議院内閣委員会および復興特別委員会の民主党筆頭理事として全力で仕事に取り組みました。

国会議員は国会の各委員会にそれぞれ所属するのですが、委員会の運営(どの議案をどのような日程で審議するかなど)は各党から選ばれた理事(計8名前後)の協議によって行います。各党の理事の取りまとめ役となるのが筆頭理事であり、政党間の対立から委員会の運営が行き詰まったりすると、各党の筆頭理事同士の協議によって打開を図るということもしばしば必要になるのです。

国会では政権を担っている与党の議員と野党の議員では当然ながら立場が違っています。与党議員に最も求められるのは法律を通すこと、すなわち法案を国会で成立させることです。私も野党時代には、時の政権に対して論戦を挑み、政策を作って、議員立法による法案を国会に提出していました。野党なので法案を通すのはほぼ無理なのですが、これは議席の少ない野党には仕方のないことです。しかし、与党となると法案を出した以上、通すところまで責任を持たなければなりません。法案が通らないと議席の多数を占めている与党としての力量が問われてしまいます。

理屈で解決できない問題が国会に来る

私は2011年通常国会(1月~8月)で内閣委員会の筆頭理事になったとき、国会で法律を通すことを最大の責務と考えて仕事に全力を尽くしました。この姿勢は、引き続く臨時国会(9月から12月)での復興特別委員会でもまったく同じです。

では、与党の筆頭理事はどのような姿勢で臨むべきなのでしょうか。私は、自民党や公明党など他党の理事の皆さんとの理解と了承を得ながら委員会を運営することが最も重要と思います。そこでは合理性や論理性といったことも大切ですが、人間同士の信頼感や納得感、感受性、洞察力といったものが大事になってきます。つまり、理屈ではない領域があるのです。

これは次のように言い換えることもできるでしょう。世の中で理屈によって解決できるような問題は国会まで上がって来ません。逆に言えば、国会に持ち込まれるのは理屈で解決できない問題です。しかも、国政では政党が違えば考え方が違い、同じ政党でも所属議員の考え方は必ずしも同じではなく、その中で一つの合意点を見付けることが国会の仕事とすれば、それは理屈によって行われるものではありません。

理屈ではないとすると、そこでは人間関係のあり方や人間の情が大きな比重を占めるということです。この点では生命保険業の営業職として5年間働いた私の経験が大いに生きています。国会で筆頭理事として法律を通すという営みも一面では営業の仕事につながるところがあります。

営業マンはまず相手の立場で相手が何を求めているかを考えなければいけませんが、私が営業マンの仕事を始めたとき、先輩からこう言われました。「営業の仕事は相手の立場を尊重し、誠心誠意、聞いて、聞いて、聞いて、そして信頼を得ることができて、初めてこちらの話を聞いてもらえる局面が生まれてくる」と。

ですから、私は国会でもまず他党の要望を聞いて、その要望を実現するために全力を挙げました。するとやはり、他党の議員たちも私にしだいに心を開いてくれるようになって、「まあ、大島の話も聞いてやってもいいかな」というムードも生まれてくるのです。

復興庁に大臣が置かれることになった経緯

今回の復興庁設置法案において協議の中心は政務三役の人数でした。復興特別委員会の民主党筆頭理事である私がこの問題で協議した自民党の相手側は大臣経験者にして自民党の派閥の領袖でもあるA議員です。

政府側の最初の案では大臣1人、副大臣1人、政務官3人を置くことになっていました。しかし私は、「政務官はいわば大臣の秘書官なので各復興本部に政務官が張り付いても連絡要員に過ぎなくなるから政務官の代わり、副大臣を増やすべき」と考えていました。一方、自民党側は、大臣は必要なく、副大臣、政務官を増やすことにも消極的という立場でした。

自民党はこの件については大物議員であるA議員に一任していました。協議の最後の焦点になったのが大臣を置くかどうかと副大臣の増員でした。個人的には副大臣が3人になれば大臣は必要ないと思っていたものの、大臣設置は首相官邸の強い意向だったのです。協議を続ける中のある瞬間、A議員はぽつりとこう言いました。「誰に回答すればいいのかね」。この言葉を聞いて、私はすぐに思い当たりました。つまり、「大臣を置くことには検討の余地がある。このような統治機構に関する重要なテーマについては、しかるべき責任者からの説明が必要である」とA議員の真意を理解したのでした。

それで、私はさっそく平野復興大臣に連絡し、A議員に説明を入れてもらうようにお願いしました。その電話によって復興庁に大臣が置かれ、副大臣も1人から2人に増員することができたと考えています。党利党略よりも復旧と復興を最優先に考えるA議員のご見識に敬服するとともに、おおいに勉強になりました。

なお、今回の協議で副大臣を1人から2人に増やしたのも政治的には大きな成果でした。なぜなら、副大臣は行政のトップとして人事権を持つこともできるからです。

法律を通せば国会議員の仕事の幅がさらに広がる

いずれにせよ、与野党を問わず、議員同士でしっかりとした人間関係が築ければ、法律が通る局面を迎えられる可能性が高まります。今回、私は国会で会期内に復興庁設置法のほか復興特別区法、東日本大震災事業者再生支援機構法などほぼすべてを各党の協力を得て成立させることができました。国会で法律を通せるのは国会議員だけですから、法律を通してくれる国会議員は官僚からも頼りにされます。また、そのことが政治家としての仕事の幅をさらに広くしてくれるのです。