【国会レポート】マスコミ報道と切り離せない政治家の言動【2012年1号】

現代の政治家の言動はマスコミ報道と切り離せなくなっています。「テレポリティクス」(テレビによる政治)という言葉もあるように特に政治とテレビの関係は深いでしょう。そのため、テレビに出演する政治家の認知度は高いですし、テレビでの政治家の発言が政治に直接大きな影響を与えることも少なくありません。

一方、テレビに出演しない政治家はあまり仕事をしていないような印象を視聴者(有権者)に与えていると言えます。私もテレビに出て発言していませんので、地元でお会いする方々から「どうしてテレビに出ないのか」と聞かれることもしばしばです。さらに「テレビから出演依頼が来ないのか」と言われることさえあります。

本末転倒を招きがちなテレビでの発言

実際には、党政策調査会筆頭副会長という立場ですからテレビ局からの出演依頼もしばしば舞い込むのですが、私はテレビに出演することをあえて避けさせていただいています(ただし個人としてではなく党の公的な仕事としてのテレビ出演は当然引き受けます)。

私は党公務員制度改革プロジェクトチーム座長でもあるので、最近もテレビ局から公務員制度改革をテーマとするBSでの討論番組への出演依頼が来ました。FAXによるこの依頼状には「『どうなる?公務員制度改革…改革の行方を問う』(仮)をテーマに、今後の改革の行方についてお話を伺いたい」と記されていました。

この依頼状を読むと皆さんも「プロジェクトチーム座長なのだから出演すべき」と思われるかもしれません。しかし、私は、出演依頼を受けたとき、まさに与党のプロジェクトチーム座長という責任ある立場で公務員給与の引き下げについて各党との協議を進めていたところでした。そんなタイミングで私がテレビで発言すると、交渉の幅を狭めたり各方面に影響を及ぼす恐れがあります。リスクを避けるために依頼を断りました。

つまり、今回は国家公務員の給与の引き下げという重要な問題について国会で協議していましたので、私が討論番組に出演した場合、発言内容によっては国会での協議に支障をきたすと考えたのでした。

もちろん私もテレビに出演したときには最大限自分の発言には気を付けるようにしますが、民放で報道番組を持たれていた大学の先輩にこう言われたことがありました。「1秒1秒の視聴率をつねに意識しながらキャスターは話さなければならない」。要するに、テレビの討論番組の司会者は、出演した政治家から視聴者が関心を持つ発言を引き出すことに神経を使う役目であり、それが仕事でもあるのです。司会者に質問されて視聴者を意識するばかりに余計なことを言ってしまうかもしれません。実際、司会者に乗せられて、サービス精神からか、迂闊にか、余計な発言あるいは失言をしてしまい、国会運営を混乱させた国会議員を数多く見てきました。

余計な発言や失言が信頼関係を損なう

国会で1つの法案を成立させるまでの道のりは長く険しいものです。その間、与野党議員はお互いに駆け引きを行い、ときには足を引っ張ったりするなどさまざまな争いが繰り広げられます。しかし、強調しておきたいのは、与野党議員とも各選挙区から有権者の皆さんの負託を受けて国会に来ているのですから、この争いは民意が表れる大変に重要なものなのです。大切にしなければなりません。ただし与党議員としては法案成立のためには不必要な争いを避けることも肝要です。

野党議員は与党議員と協議する前に必ず国会の議事録をすべて読んで臨みます。というのも、協議中での与党議員の発言が国会での以前の発言と矛盾している場合、野党議員はその矛盾を突けば自分たちの主張を通しやすくなるからです。同様に、テレビでの与党議員の余計な発言や失言は、野党議員にとっての有利な交渉材料になってしまいます。これはまさしく与党議員にとって不必要な争いであって、気を付ければ防げることなのです。

別の言い方をすれば、マスコミでの政治家の熟慮しない発言や失言は信頼関係を損なう原因にもなります。この信頼関係は政治家の支持者や他の政治家はもちろん役所、マスコミ、日本の各種団体、外国の要人などすべての範囲に及ぶのです。「信頼をつくるのには時間がかかるが、失うのは一瞬である」と言われますが、信頼関係がないと政策も実行できませんし、政治も進みません。

一例を挙げてみましょう。国家公務員給与の引き下げの協議をしてきましたが、関連して地方公務員も同様の給与引き下げをすべきという話があります。現実にも多くの地方自治体が給与引き下げに取り組んでおり、実際、すでに給与を下げている自治体も多いのです。しかし、与党議員がテレビで「地方も給与引き下げにしっかりと取り組んでもらいたい」と発言したらどうでしょうか。今や「地域のことは地域で決める」、地域主権の時代でもあります。このような国の上から目線での発言に地方は大きく反発するでしょう。誤解を収拾するためにはさらに大きな労力が必要となるのです。

実績優先で取り組むことが重要である

ともあれ、私は求職者支援制度、準天頂衛星、上尾道路2期工事の新規事業採択など強くこだわってきた政策のほか、筆頭理事として携わった内閣委員会や復興特別委員会の法律案をほとんど国会で成立させてきました。政治は実績を挙げることが最重要と考えています。今後とも公務員制度改革など手掛けてきた政策課題をしっかりと実現すべく取り組んでいきます。